MODERN WORKERS / PLAIN JANE JONES

「ナイジェル・ケーボン」が考えるモダンワーカーとは、“ワーク”と“ライフ”、その両方にスタイルを持っている人のこと。この連載では、国内のローカルエリアに焦点を当て、各地で活躍するモダンワーカーの日常に迫る。

今回の舞台は岡山県。一昨年オープンした、お茶ができて本が読めて手紙の書ける花屋「plain Jane Jones(プレーンジェーンジョーンズ)」のオーナー、三谷 まいこ氏を訪ねた。

 

贈り主と一緒に考え、一緒に楽しみながら、花を贈る

三谷氏が「プレーンジェーンジョーンズ」を開いた理由は、花はもちろん、花を人に贈ることも好きだから。ブーケを作るときは、予算や花の種類の希望だけではなく、贈る人と受け取る人の人となりも参考にして、“花を贈る”を特別な体験に変えていく。

「お花を人にあげるのって、楽しいですよね。お客様にもそう思ってもらいたいし、喜んでもらいたいので、ブーケを作るときは、お客様の気分やお相手の人柄なども伺います。ご自宅用のお花をお求めのお客様とは可愛いと言い合いながらお花を一緒に選んでいます」

 

私も含めた誰かのための3番目の場所になれたらいい

店名の「プレーンジェーンジョーンズ」は、アメリカのラブロマンス映画『クローサー』に出演しているナタリー・ポートマンの役名。映画のストーリーや彼女の役どころが、店づくりのヒントになった。

「私はこの店を私の城だとは思っていないんです。映画に出てくるジェーン・ジョーンズのような、当て所のない感情を抱えている人が気軽に来られる、誰かのサードプレイスになれたらいい。でも、お店もお客様と一緒に変わっていくものですし、お店の在り方にこだわりはありません」

 

2階の一室だからこそできるオーダーメイドの接客

一般的に、花屋は駅近や路面店など、店内が見えて立ち寄りやすい場所にあるが、「プレーンジェーンジョーンズ」はそうではない。店があるのは、大通りを一本入った細い小道沿いの雑居ビルの2階。しかも、ショップの目印は、シンプルなワイヤーアートが入口に飾ってあるだけ。通りすがりの一見客は、ほとんど立ち寄らない。

店内は、三谷氏のお気に入りの品で満たされている。花のほかに、ご縁でつながった備前焼アーティストの作品や弟からもらったぬいぐるみなど。窓際のソファに座り、本を読んだり花に添える手紙を書いたりすることもできる。誰にも内緒で、こっそり行きたくなるような場所だ。

仕入れの基準は、その花に心が動いたかどうか。ひまわりやバラなど定番品から、人工的に色付けされた花や珍しい品種の葉のもの、近くの河辺で季節の野草を積んで、ブーケに加えることもある。

「買い付けるお花は毎回違うし、だいたい3日間ぐらいで全部売り切れるように仕入れているので、日によってお店の雰囲気はガラッと変わります。回転が早いので、お客様からウチで買ったお花は保ちがいいって褒めてもらえるんですよ。お花がそれぞれのご家庭でも有用であればいいなと思っています」

 

自分も花屋の一部として身なりや着こなしに気を遣う

三谷氏が市場へ行くのは月、水、金曜日。朝7時に家を出て、日中は接客、花瓶の水替え、注文分のブーケづくり、事務作業など。手が空いたら観葉植物の手入れをしながら、2階の窓際でのんびり風に吹かれる。三谷氏の一日は、あっという間に過ぎていく。

「ステキなお花屋さんを通して、お花に興味が湧くことってありますし、当店の場合はSNSを見て来店される方も多いので、そのイメージを崩さないためにも身なりや着こなしには気を使っています。それにブーケ作りには、自分の内面も反映されてしまうので、気分良くいられる服装でいることって大切なんですよね」

 

軽さと心地よさにこだわりプライベートでもフル活用

クローゼットのなかには、仕事着と食事用のドレスしか入っていない。好みの洋服はミニマムで着心地のいいもの。お洒落はオンオフ兼用で楽しんでいる。

「洋服は生地の面積が小さくて、軽ければ軽い方がいい! だから襟付きの服は苦手です(笑)。このナイジェル・ケーボンのシャツは、しっとりとしていてサスサス触りたくなっちゃう。営業中はシャツの袖は捲って輪ゴムで固定しています」

この日のボトムスは、〈ナイジェル・ケーボン〉のブリティッシュアーミーパンツ。三谷氏は、肌触りの良い生地でサラッと穿けるところがお気に入りなんだとか。ハサミやペンなど、道具はサロンのポケットに入れているが、作業に没頭するといつの間にかポケットの中は空っぽに。

「手を入れていると安心するので、ポケットのあるパンツっていいなって……あれ、なんでここにボールペンの跡がついてるんだろう(笑)」

 

ポンコツな完璧主義を貫き、花との関係を続けていく

三谷氏の理想は、常に余白を持った働き方。今よりも花との関係値を深めるために、譲れない自分の本音は尊重しつつ、こだわりを捨てて、身の振り方も決めない。

「私の力量で、どれくらい花と関わっていけるのか確かめたいと思っていて、もしお店を続ける必要がなければ閉める心算でいます。それくらい自分を自由にしておいた方が、視野が広く保てて、可能性も広がる。ポンコツな完璧主義を貫き、これからも花との関係を続けていく予定です」

SHOP INFORMATION
SHOP:plain Jane Jones / プレーンジェーンジョーンズ
INSTA  / CONTACT@jane.jones_flower
ADDRESS:岡山県岡山市北区表町3-7-20 2F
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