An Interview with Women’s Designer Emilie Casiez

2020.10.16
ウィーメンズウェア デザイナー: エミリー・カジエへの取材

エミリー・カジエはナイジェル・ケーボンのウェーメンズウェアのデザイナーです。ヴィンテージウェアへの知識と、機能等の正確な理解、そして彼女の感覚を合わせることでモダンな感覚を持つアイテムに昇華をするのです。今季も新たなアイテムが揃ったところで、彼女への取材を敢行してみましょう。

まずは彼女自身の生い立ちに関して、少々伺います。
父はフランス人、母は日本人です。私は母がファッションブランド、メゾン グレで働いていたためパリで育ちました。曾祖母も実は北フランスでレース生地の工場を1930年代に持っていたのです。

正にファッション界で働くことは運命のように聞こえますが、本人としては同じ業界に入ることを望んでいたのでしょうか。
小さな時から絵を描くことは好きで、ファッション界に対して興味はありました。実際に意識し始めたのは、私が14歳の時に母がキャットウォークに招待してくれた時です。



パリで育ったとのことですが、どのような服に興味があったのですか。
17歳の時には毎週末フリーマーケットに言っていました。Levi’s 501が好きで、上下デニムであったりタイプⅡのトラッカーデニムジャケットを着ていましたし、自分で染めたり、カスタマイズしたりしていましたね。

この服への愛が10年に渡って保持した自身のブランドに繋がるわけですね。その後、ブランドは辞めて日本に移住していますが、このきっかけは何だったのでしょうか。
ブランドはパリでの学生時代に立ち上げました。10年に渡ってブランドと店舗を運営してきましたが、パリでキャットウォークを行っている日本のブランドの元で働く機会を得て、より経験値が詰めるのでは、また日本人の血が流れていることもあって移住を決心したのです。



ナイジェル・ケーボンのデザイナーとして数年経ちますが、ナイジェルとはどのようにして会ったのですか。
共通の友人を通じてナイジェルとは東京で会いました。彼がナイジェル・ケーボン ウーマンの画を書いてみて欲しいというので、書いたところ気に入っていただけたようでした。
数か月後にパリで再会し、私がフレンチワークの服を試着していた時に、我々の共通の感覚があることに気付き、それは将来的にナイジェル・ケーボン ウーマンに描く未来像と重なるものがあったのです。



貴女のデザインはフランスやイギリス、更にはアメリカのワークウェアのデザインを取り入れていますが、どのようにして融合させているのですか。
元々ワークウェアというものは、流行に左右されるものではありません(実際にLYBROは1940年代に活躍していたブランドです)。素材としては、色のフェードや自然素材、機能的でありそれがまたシンプルで美しいこと、そして良い意味で変わらないことが興味深いですね。今も我々のLYBROでは第一次大戦や第二次大戦時に開発されたモールスキンやキャンバス、コットンヘリンボーンやサテン等の多くの素材をしています。



その国々によるデザインの差は何なのでしょうか。例えばフレンチワークウェアに関して特記する点はありますか。
分かり易いところだと、フレンチワークウェアはインディゴブルーの物が多いですね。一方アメリカやイギリスはカーキ色のツイル素材が多いです。デニムは分かり易く、実際にアメリカ軍もデニム素材のものを1930年代から取り入れています。フランスでは1920年代以降、仕事で使用した服を繕いでは家族に継承していく感覚もあります。

新たなデザインを始める段階に関してですが、何処から物事を始めますか。
私は住んでいるパリで仕事に携わり、ナイジェルとはデザインのインスピレーションを得る為に良く旅しています。インスタグラムでもご覧いただけるように、東京、ロンドン、ニューカッスル、オーストラリアのキャンベラ、それらの地では縫製工場や素材展、織機工場、ヴィンテージストア、戦争博物館、それとフリーマーケットに行きます。



ワークやミリタリーウェアは男性物というイメージがありますが、実際には女性物も見逃してはいけないと思います。その中の何処にインスピレーション源を見出すのですか。
実際のところはそのシーズンテーマに因って着目する点は変わります。ですが、良く着目するところとしては第一次大戦のイギリスのワークウェアですね。例えば、弾薬工場の工員が着用していたコアジャケットやウェアハウスジャケットでしょうか。後は陸軍の女性隊員やアメリカのW.A.V.E.S. (Women Accepted for Volunteer Emergency Service:海軍婦人部隊)、W.A.S.P. (Women’s Auxiliary Service Pilots: 陸軍航空婦人操縦部隊)ですね。

ナイジェルの様にヴィンテージコレクターと言えると思いますが、どのような物が好きですか。
男性のミリタリーやワークウェアだけど、女性にフィットするものが好きですね。後は男性物のデザインだけど、女性版に改良されたものとか。個人的には男性物のユニークな物が好きです。私が来ているオレンジ色の1960年代のアメリカのフライトスーツとかですね。



AW20は第二次大戦時の北極海に於ける輸送船団をテーマとしていますが、これをどのように解釈しましたか。
素材と輸送船団員の着用物のディテールに着目し、女性化することです。このことに因り、男性物の服がしっかりとした女性物の服として成立するようになりました。









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