今回の舞台は宮城県。2013年にオープンした「Nigel Cabourn THE ARMY GYM SENDAI STORE(ナイジェル・ケーボン・アーミージム仙台店/以下、仙台店)」のショップマネージャー、里舘 武を訪ねた。
視野を広げて、お客様のニーズに寄り添えるように
“ファッション以外の話も知らないと、ダメだよ”。これは里舘が心に留める、地元の先輩からの教え。お客様それぞれの立場や仕事、趣味に寄り添った接客をするために、〈ナイジェル・ケーボン〉以外のことにもアンテナを張って、20年以上“接客”と向き合ってきた。「独りよがりになってしまうので、洋服についてのうんちくは、お客様の様子を見てから話すようにしています。会話の引き出しを増やす意味でも、役に立つのが本や映画。最近は落語家の立川談春のエッセイ『赤めだか』を読んで泣けました」
年齢を重ねて、上品さと格式の高さを求めるように
里舘は「仙台店」のショップマネージャー。オープニングスタッフとしてブランド品を扱うユーズドショップから転職し、現在入社11年目だ。若い頃は、奇抜なドメスティックブランドを好んで着ていた里舘。30代に突入してからは、カジュアルだけど品のいい服を着るように。そんな時に出会ったのが、〈ナイジェル・ケーボン〉だった。
「ナイジェル・ケーボンは入社前から憧れのブランドでした。念願叶って入社できた時、雑誌で見かけてカッコいいなと思っていたカメラマンジャケットを買いました。今でも大切な一着です」
「仙台店」は、仙台駅から南西方向に徒歩10分ほど歩いた東一番丁通り沿いにある。オープンは2013年、昨年末リニューアルを果たした。隣接するアメカジ系セレクトショップの「SPEEDWAY(スピードウェイ)」と店内でつながり、2店舗を自由に行き来できるようになった。アンティークの什器を使用した店内には、「スピードウェイ」の主要ブランド、レザーシューズメーカー〈John Lofgren Bootmaker(ジョン ロフグレン ブーツメーカー)〉のデザイナーであり、2店舗のオーナーでもあるジョン ロフグレン氏が買い付けた、アーミーバッグやグローブなどヴィンテージグッズも並ぶ。ワイルドなディスプレイも仙台店ならではだ。
ショップは驚きや発見をお客様に提供できる場所
今どきネットでも簡単に洋服を買える。そんな時代のショップの役割とは何か。試着をしたり、生地感を確かめたり。実物に触れられるからこそ、発見や驚きがあると里舘は話す。「ネットでは見向きもしなかったけど、実物を見たらカッコいいですねって、お客様からよく言っていただけるんです。ブランドとお客様のそうした出会いをサポートすることが、私たちの役目だと思っています」
昨年末には10周年を記念したイベントを開催。店内は、長年支えてくださったお客様で溢れ返った。そんな「仙台店」とお客様の関係を物語る、藍色のだるまを里舘はうれしそうに取り出す。
「5周年記念のイベントを開催した時、群馬からお越しのお客様にサプライズでいただいたダルマです。その方はダルマ職人で、こちらもハンドメイド。ちなみに、目玉はイベント当日に現場にいたナイジェル氏が筆入れしました」
キャラやスタイルを客観視して、スタイルをつくる
里舘は大のジャケットマニア。毎シーズン買い足して、シャツやパンツとの組み合わせを楽しむ。自分の体型が一番キレイに見えるシルエットを追求し、タイムレスな付き合いをアイテムと続けていく。「お客様にたくさん試着をしていただきながら、一緒にベストなサイズ感を見つけるのが楽しいんですよ」
スタイリングを組む時は足元から考えるのがルーチン。ぽってりしたブーツには無骨なデニムを合わせて、ボリュームを揃えるのが里舘流。
「お客様からコーディネートのヒントをもらうことも少なくないです。ナイジェル・ケーボンを本当にカッコよく着こなしてくださっていて、勉強になります」
気に入った服は着まくって、自分のファッションになじませる
里舘はプライベートでも〈ナイジェル・ケーボン〉を溺愛。オフでは、オンよりも少しカジュアルなスタイルにまとめる。「私は新しい帽子や眼鏡を身につける時に、見慣れていないせいか、似合っているのか不安に思うタイプなんです(照)。服も同じで、着ている時間が長ければ長いほど自分に似合っていく気がするので、プライベートでも着まくっています」
〈ナイジェル・ケーボン〉ばかり着ているから、ある意味、ファッションについては無頓着かも。里舘は、そんなことを言いながら笑って話を続ける。「もしデニムを新調したら、毎日のように穿きまくって、クタッと感を早く出す。デニムは色が落ちて表情が変わるのもおもしろい。気取りすぎないラフなスタイルを目指しています」
これから先も、お客様と一緒に歴史を紡いでいきたい
現場で接客をすることは、里舘のライフワークそのもの。これまでの10年間とこれから先の10年間、里舘の想いは〈ナイジェル・ケーボン〉と共にある。「顧客様の息子さんが、この前お店に来てくれて驚きました。私のスタイルを真似してくれるかわいい小学生だったのに、今や身長が186センチも。10年の歴史を感じた瞬間でしたね。次の10年も、お客様と笑い合えるように、私はブランドの情熱を伝えていくだけですね」