今回の舞台は岡山県。2016年にオープンした生活道具店「トライアングルマーケット」のオーナー、佐藤 範男氏を訪ねた。
ストーリー仕立ての愉快な接客でアイテムを提案する
意気揚々と買った生活道具を、すぐに使わなくなった経験は、誰しも一度くらいあるはず。しかし「トライアングルマーケット」で買い物をすれば、そんな問題ともオサラバ。オーナーの佐藤氏の軽快なトークは、耳を傾けたくなる実用的な内容で、ライフスタイルにフィットするアイテムをきちんと選べて、自宅に持ち帰ることができる。「雑貨店にしては珍しいと思いますが、僕の店では接客するのが当たり前。いろんな人が来てくれて、いろんな話ができる。で、どんなストーリーを話せばモノが売れていくんだろうと考えるのが、この仕事の楽しいところ。モノを話のオチに使う感覚というか、お客様と日々の会話をしながら商品の提案をしていくっていう感じです」
人とモノに興味があるから、自分で生活道具店を開いた
佐藤氏は、18歳から接客業に携わっている。古着屋で販売員をして、23歳で工具・DIY・整備用品を取り扱うメーカーに転職した。そこで39歳までキャリアを磨き、独立して「トライアングルマーケット」をオープン。数度の移転を経て、現在8年目を迎える。「とにかく人とモノが好きなんですよ。で、どうせモノを売る仕事なら、自分も私生活で使えるモノがいいよなって思って。人におすすめを紹介する感覚で、生活道具店を開きました」
自分が使いたいと思える品揃えで、お客様を出迎える
店のある場所は、豊かな自然に囲まれた岡山県玉野市。瀬戸内海に面した潮風の気持ちいい「SEA RAY PARK(シーレイパーク)」内の一角で営業している。ワンフロアの店内にはアイテムが所狭しと並んでいて、気になるものが次々目に止まる。商品構成は、掃除・洗濯・収納の3つのカテゴリーをメインに、その他生活に必要なモノがセレクトされている。アメリカ、ドイツ、日本のメーカーが多く、主要な品揃えは8年前からほとんど変わっていない。
「洗剤だったらお肌にも環境にも優しいモノ。掃除道具だったら、使いやすいし引っ掛けておいてかわいいモノ。できるだけ、自分で使ってみてよかったモノだけをラインナップに残しています」
主力商品は、売り場の什器としても使用しているイタリアンメーカー、メタルシステムのスチール製ラック。パーツを組み合わせてデザインをカスタマイズできるため、さまざまなシーンにフィットするのが魅力だ。配達、組み立て無料で、可能な限り納品も佐藤氏が引き受けている。「納品先でもめちゃくちゃ喋ります。店は僕のホームですけど、納品先はお客様のホームですから、本音のニーズを伺えるんですよね。むしろ、現地で喋ったらダメって言われたら行きません。冗談ですけどね(笑)」
働くために都合のいいタフなワークスタイルが制服
佐藤氏の仕事着は、シャツにチノパンやデニムが定番。店頭で作業する時、荷物を運ぶ時、ペンキを塗る時も、いつも通りのワークスタイル。〈ナイジェル・ケーボン〉を着用したその姿は、まさに“働く人”そのものだ。「上がタイトで下がダボが好きだから、シャツはジャストサイズ。〈ナイジェル・ケーボン〉のシャンブレーシャツもずいぶん着ています。動きやすいように、パンツはオーバーサイズを選んでいて、するとウエストが大きくなるから、サスペンダーでパンツを吊るんです。ウエストに手を入れておくとラクでいいから、気がついたら、よくやってますね(笑)」
趣味もワークスタイルで楽しんで仕事につなげていく
基本的に、夜は21時30分ごろに就寝。朝5時に起きて、洗濯や掃除など家事をする。バイクが好きで、出勤前にツーリングへ行くことも多く、その道中に出会ったバイカーと世間話をしながら、ショップのこともアピールする。バイクにまたがる時も店頭に立つ時と同じワークスタイルだ。ワークスタイルの他には、キレイめなジャケパンスタイルの日も。佐藤氏にとってファッションは、コミュニケーションツールのひとつなのだ。
「ワークスタイルはカッコいいんですが、キチンと感はない(笑)。品のいいお宅に納品へ伺う時は、ジャケットを羽織っていきますよ。相手に合わせてコーディネートを選ぶのも大切ですよね」
未来の予定を固めすぎず、時流に合わせた挑戦をする
店名のトライアングルマーケットとは、“三角形の店”という意味ではなく、挑戦、角度、店という三つの言葉を組み合わせた造語で、欧文では“try-angle-market”と表記する。いろんなコトやモノを試す店を目指す。そんな意気込みが店名に込められている。「7月ごろの完成を目指して、外の空きスペースに、物置き用の倉庫を設置する予定です。あとは、自然のロケーションを生かして、店の前の丘の上にキャンプ場を作ろうという計画をしています。具体的にはそれくらいで、基本的にやることは細かく決めないようにしています。コレって決めてしまうと、それだけになりそうで。時代は変わっていきますし、それに合わせて挑戦を続けていきたいと思っています」