In Depth: Dungarees and Bib Overalls

ダンガリーとビブオーバーオールを掘り下げる

ダンガリー(米国ではビブオーバーオールやビブス、日本ではオーバーオールとして知られる)は汎用性が高い真のワークウェアデザインです。大工やペンキ職人、メカニック、工場で働く人が纏っていた所謂作業着であり、ある意味ではファッションという感覚は100年もの長きに渡って無く、作業着=ユニフォームであったのです。

今シーズンのダンガリーの説明と共に、その歴史も少し紐解いていこうと思います。

諸説ありますが、ダンガリーという言葉の起源は遡ること17世紀のインドの村の名前「Dongri」であると言われています。ムンバイの近くにある海沿いの小さな村で、そこの主な産業の一つに「Dungri」として知られている藍染め生地があります。それが英国に輸入され、Dungareeになったということなのです。



その素材は価格も安く且つ高い耐久性を兼ね備えていたため、18世紀後半にはスロップスという、日本で言うところのオールインワンに多く使われる素材になりました。元々オーバーサイズで作られていて、ズボンやシャツの上に着ることでオイルや泥等の汚れを防ぎ且つ身を守るもの、また道具を仕舞う機能を付けることで農夫や船乗り等に愛用されたのです。



19世紀に入ると道が至る所に作られ、工場が町という町に出現、米国の独立戦争も幕を閉じ様々な分野でダンガリーは着用され始めます。産業革命が起こり、18世紀のスロップスはポケットを備え、リベットやトリプルステッチでその耐久性を更に高めるに至りました。

ある人はパンツの上に履き(これは今のジーンズの起源に当たります)、またある人は上半身だけ残してスロップスのパンツを切り落としました(これが今のカバーオールに繋がります)。しかし、ダンガリーはツールベルトやポケット等こそ足されましたがその形を残しました。米国でも様々ブランドが同アイテムを発表していましたが、基本となるしっかりとしたコットン製、必要数のポケットは高い収納力を備え、またシルエットとしてはリラックスしたワイドシルエットであるということは同じです。



1911年にヘンリー・デイビッド・リー氏が大量生産の為にビブオーバーオールの特許を取り、それは労働者の中で瞬く間に拡がりました。米国の労働者のシンボルとも言えるものになりました。ペンキ職人は白、鉄道作業員はヒッコリーストライプ、そして農夫は青。米国ではその由来であるダンガリー素材は忘れ去られてしまったのです。一方で英国ではその素材がイコールで、その服を指していることに変わりはありませんでした。



第一次大戦に入ると、数百万人もの女性が農場や工場での従事することとなります。「Respectable Lady=尊敬すべき女性」としてのイメージ確立の為にロングスカートが支給されましたが、その使い勝手の悪さから定着せず、また同時期に多くの会社がコットン製のショーツ等を提案しましたが根付くことはありませんでした。ただ一部、昔からあるダンガリーを着続ける人は居ました。



このような重労働に従事する女性が纏う服は19世紀に入ると一変し、第二次大戦までにはダンガリーを着用した女性のポスターが至る所に貼られる等、その象徴とも言えるまでになりました。




第二次大戦では軍に携わる人もダンガリーを着用していました。空母の甲板での任務は風や雨に晒される厳しい環境で、極めて機能的な服を求められることは想像に難くないのではないでしょうか。実際に米国海軍は「デックビブ=甲板で着る為のビブ」を開発し、そのデザインもヒッコリーストライプからミリタリーらしい厚いオリーブ色のコットン素材に変わったのです。

別の興味深い話としては、1920年代に米国のアラバマ州でのものがあります。衣類の値上がりに反対する「オーバーオールクラブ」と名乗る人々が昔のダンガリーを着て抗議をしたのです。これは瞬く間に米国中に広がり、また同時にダンガリーの作りの良さ、適正な値段、そして衣類業界へのアンチテーゼの象徴となりました。改めてワークウェアとしての認知度を得たのです。

このムーブメントは1960年代にもあり、ダンガリーの存在を人々は度々認識していました。19世紀に入るとシェアークロッパー(米国南部の分益小作人)や市場で着用する人々が散見され、それは同時に自分達の権利主張の体現でもあったのです。

20世紀も後半に入ると、その体現こそ変わらぬものの、西海岸ではヒップホップグールやインディーズのバンドが着用をし始め、ファッションとして認知され始めます。ただ一方で今も尚、その元来の目的である重労働者に着用されていることも事実です。



今季ナイジェル・ケーボンは既存の「ネイヴァルダンガリーを初め、硫化染めのキャンバスとまた世界が誇る日本製の12オンスのデニムで、また同時に米国海軍のデックビブからインスピレーションを受けた女性用の商品も展開しています。他にも1950年代の米国のヴィンテージをベースにしたオーバーサイズフィットとバックル使いが特徴的なものもあります。

歴史が証明した機能性を兼ね備える服、それがダンガリーなのです。